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「花粉症を根本から治したい」——そんな願いを叶える治療法として注目されているのが舌下免疫療法です。しかし、治療を始めた多くの方が直面するのが“通院の負担”。そんな課題を解決する手段として、いまオンライン診療が注目を集めています。

1.花粉症のメカニズム

花粉症の症状がある方は年々増加傾向で、2025年に東京都が発表したスギ花粉症の有病率は約52.3%となっており、都民の2人に1人以上がスギ花粉症を患っているという推計が出ています。これは、2017年の48.8%、2007年の28.2%と比較しても、着実に増加傾向にあることがわかります。特に都市部では、生活環境や大気汚染、ストレスなどの影響も指摘されており、花粉症の発症リスクが高まっていると考えられています。

参照:東京都健康安全研究センター 花粉症一口メモ 2025年版

この花粉症、ご存知の通り、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの症状が現れ、QOLが低下するだけではなく、イライラ感、就寝中に鼻が詰まってしまうことによって起こる睡眠障害など、職場や学校におけるプレゼンティーイズム(疾病就業)を引き起こし、日常のパフォーマンスにも大きな影響を与えてしまいます。

2.医療機関での一般的な処方薬

そのような花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)に対して、医療機関で従来から処方されてきた代表的な薬剤は、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬と呼ばれるものです。
前者の抗ヒスタミン薬では、アレグラ(一般名:フェキソフェナジン塩酸塩)やアレロック(一般名:オロパタジン塩酸塩)、クラリチン(一般名:オロパタジン塩酸塩)をはじめとして、比較的新しいものではビラノアやデザレックスなどが有名です。抗ロイコトリエン受容体拮抗薬だと、キプレス(一般名:モンテルカストNa)やオノン(プランルカスト水和物)がよく処方されるお薬となります。

さて、先述のとおりアレルギー誘発物質であるヒスタミンやロイコトリエンは、体内で受容体に結合することでアレルギー反応を引き起こします。例えるならば、鍵(アレルギー誘発物質)と鍵穴(受容体)の関係です。これに対して、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン受容体拮抗薬の作用は、薬剤自体が「鍵」の役割を果たし、その鍵穴(受容体)に先回りして結合することで、アレルギー誘発物質が結合できなくしてしまいます。その結果として、アレルギー症状が抑えられるというわけです。

花粉症のお薬はよく「症状が出る前に早めに飲むことが大事」といわれる所以の一つはここにあります。鍵穴の中にアレルゲン・花粉が結合してからでは、抗ヒスタミン薬が入り込む隙間がないため、薬が効き始めるのに時間がかかってしまいます。

3.舌下免疫療法とは?

前項では抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬など、医療機関で従来から使用されてきた薬剤のおおまかな作用機序について解説しました。今回のテーマである「舌下免疫療法」は、それらの薬剤の作用機序とは全く異なるアプローチで花粉症の治療を目指します。「舌下免疫療法」は、アレルゲン免疫療法や減感作療法と言われる治療方法に属します。このアレルゲン免疫療法自体は、注射による「皮下免疫療法」として60年以上前から行われてきたものでした。

具体的にどういったものかというと、花粉などのアレルゲンをあえて体内に取り込むことで、身体を徐々にアレルゲンに慣らしていき、アレルギー症状の緩和や根本的な体質改善を目指す治療法となります。つまり、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬のような“アレルギー誘発物質が働けないようにする対処療法”とは全く異なり、“アレルゲンが体内に侵入してもアレルギー誘発物質が出ないような身体にする”、ということが投薬の目標になります。

舌の下、つまり「舌下」からスギ花粉などのアレルゲンを取り込む「舌下免疫療法」は、2014年にスギ花粉において保険適応となり、翌年ダニアレルギーについても保険適応となり、現在では多くの方が治療されています。

薬剤としては、現在スギ花粉症に対してはシダキュア(鳥居薬品)、ダニアレルギーに関してはミティキュア(鳥居薬品)・アシテア(SHIONOGI)が医療機関向けに発売されています。現在は、5歳から服薬可能となっており、小児でも治療を行うことができます。

4.どの程度の効果が期待できる?

さて、気になる効果ですが、舌下免疫療法はどのくらい効果が期待できるのでしょうか。

当院での治療実績を含め、開示されている実績を見ると、約20%の患者で「症状がほぼ消失(緩解)※1」約60%の患者で「症状が明らかに軽減」よって、全体の約80%の患者に何らかの効果があるとされています。

※1 症状が一時的あるいは継続的に軽減した状態

また、効果が出始めるのは早ければ8~12週間目となりますが、薬剤の服薬期間は3~5年が推奨されており、長く続けるほど、症状が軽快する傾向が見られています。したがって、年単位で継続することで根本的な体質改善が期待できると考えられています。

では、十分な効果が感じられるまでの期間、花粉症シーズンはどのように対処するのか、ということになりますが、その場合は抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬と併用して治療を続けることになります。

5.治療は花粉症シーズンでも始められる?

続いて、舌下免疫療法の治療を開始する時期についてです。結論からいうと、花粉が飛散している時期(1月~5月)には治療を開始することはできません。理由としては、治療効果の発現には少なくとも8~12週間かかることに加えて、花粉の飛散シーズンはアレルギー反応が起きやすくなっているため副作用(副反応)が起きやすくなるためです。従って、6~7月に治療を開始して、次の花粉症シーズンまでに十分な治療期間を確保するというのが理想的で、花粉が飛散しない時期、遅くとも12月末には治療開始する必要があります。副作用は?

6.副作用は?

舌下免疫療法で使用する治療薬は、化学的に合成した薬剤ではなく、実際の花粉から抽出して作られています。そのため、副作用も花粉によるアレルギー反応の延長上にあります。具体的には、口腔内のかゆみや不快感、のどの刺激感・不快感、耳のかゆみなどです。

また、重大な副作用として蕁麻疹や呼吸困難などを伴うアナフィラキシーショックという強いアレルギー反応が起こることも考えられます。但し、極めて稀であることが報告されており、当院でもこれまでに重大な副作用が生じた症例はありません。

当院では、患者さまの安全を確保するために、初めて舌下免疫療法を開始される方には、院内でお薬を処方後、実際にその場で薬剤を服用いただき、30分ほど副反応の有無の確認をさせていただいております。

7.治療費はどのくらいかかる?

舌下免疫療法の治療費は、再診で1ヶ月あたり自己負担2,000~3,500円程度(3割負担の場合)となります。初診で、アレルギー検査結果をお持ちでない方は、血液検査を行います。その際の費用は5,500円~6,500円程度となります。治療費に若干の開きがあるのは、処方される薬剤の種類、院内での処方か調剤薬局での処方か、によって費用が変わってくるためです。一般的には、院内処方のほうが患者さまの自己負担は少なくなります。

8.舌下免疫療法と相性のいいオンライン診療

以上のように、花粉症を根本的に治療することを目指す舌下免疫療法ですが、実際に治療を始めると、多くの患者さまは“通院負担”という壁にあたってしまいます。

なぜならば、先述のように3~5年という長期間にわたって通院を続けなければいけないということ、また、薬剤は基本的に1ヶ月分などの処方となり通院頻度が多くなってしまうためです。

クリニックが混雑するシーズンや風邪・インフルエンザの流行する季節であっても、足繁くクリニックに通わなければなりません。

さらに、継続して薬剤を飲み続けることが前提となっていますので、服薬を中断すると振り出しに戻ってしまうことになります。

そこで、いま、オンライン診療の利用が注目されています。スマートフォンやパソコンのビデオ通話機能で医療機関の受診ができるオンライン診療を利用すれば、通院負担が大幅に軽減されます。

但し、初診においては、確定診断を行うためのアレルギー検査(他院などで行っている場合には参考にさせていただき、必要に応じて検査を行うかどうかを判断いたします)や、はじめて服薬の場合は副作用(副反応)の確認が必要であることから対面診察が必要となります。

いずれにしろ、患者さん側のメリットの大きいオンライン診療。この機会にオンライン診療を利用した舌下免疫療法を始めてみてはいかがでしょうか?


監修
Dクリニック東京ウェルネス 院長
渡邊 康夫

オンライン診療を活用した 患者様目線の診療を目指します

【略歴】
日本大学付属練馬光が丘病院
日本大学附属板橋病院
日本大学医学部医学科 循環器学博士号取得
川口市立医療センター
東京臨海病院
敬愛病院・敬愛病院附属クリニック副院長
Dクリニック東京ウェルネス 院長
【認定資格】
一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
一般社団法人日本内科学会 総合内科専門医
日本医師会認定産業医臨床研修指導医
厚生労働省指定オンライン診療研修修了

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