脂質異常症(高脂血症)の治療(改善)方法について
脂質異常症(高脂血症)は、健康診断で指摘されることの多い生活習慣病の一つです。自覚症状がほとんどないため放置されがちですが、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患のリスクを高めます。
脂質異常症(高脂血症)は、健康診断で指摘されることの多い生活習慣病の一つです。自覚症状がほとんどないため放置されがちですが、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患のリスクを高めます。
しかし、脂質異常症(高脂血症)は様々な要因が絡み合って発症するため、一概に「発症の原因はこれだ」と限定することはできません。様々な要因とは大抵の場合、偏った栄養バランスの食事や多量のアルコール摂取、運動不足などが考えられます。つまり脂質異常症(高脂血症)は生活習慣から引き起こされていると言えますのです。
本記事では、脂質異常症の改善に必要な食事療法と運動療法について、具体的な実践方法を解説します。
脂質異常症(高脂血症)とは
脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が基準値を超えて高い、またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態を指します。日本動脈硬化学会の診断基準では、以下のいずれかに該当する場合に脂質異常症と診断されます。
脂質異常症の診断基準
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール):140mg/dL以上
- DLコレステロール(善玉コレステロール):40mg/dL未満
- 中性脂肪(トリグリセライド):150mg/dL以上(空腹時)
- Non-HDLコレステロール:170mg/dL以上
脂質異常症は、高血圧や糖尿病、喫煙、加齢などと同様に、動脈硬化を進行させる重要な危険因子です。動脈硬化が進むと血管が硬く狭くなり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。
脂質異常症の原因と治療の基本
脂質異常症は、遺伝的要因もありますが、多くの場合は生活習慣が原因です。偏った食事内容、過度なアルコール摂取、運動不足、肥満といった要因が重なり合って発症します。
治療の基本は生活習慣の改善
脂質異常症の治療において、最も重要なのは生活習慣の改善です。その後、薬の服用を開始した場合後も、食事療法と運動療法を継続しなければ、十分な効果は期待できません。日本動脈硬化学会のガイドラインでも、まず生活習慣の改善を3〜6ヶ月間行い、効果が不十分な場合に薬の服用を検討することが推奨されています。
食事による改善方法

脂質異常症を改善するには、食事の質と量に注意し、適正な体重を維持することが不可欠です。ここでは、食材選びや調理方法の具体的なポイントを解説します。
・肉よりも魚、大豆製品を多く摂る
青魚に豊富に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった不飽和脂肪酸は、血中の中性脂肪を低下させる効果が認められています。また、大豆に含まれる大豆タンパク質と食物繊維には、LDLコレステロールを低下させる作用があります。納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素には、血栓を溶かす作用も期待されています。
・野菜、海藻、きのこを毎食摂る
野菜、海藻、きのこ類は、毎食1品以上食べることを目標にしましょう。
野菜はビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で、強い抗酸化作用により動脈硬化を防ぐ働きがあります。特に、ピーマンやニンジンなどの緑黄色野菜は、ビタミンA・C・Eやポリフェノールが多く含まれ、優れた抗酸化力を持っています。キャベツや大根などの淡色野菜は、ビタミンCが豊富です。
海藻ときのこは、どちらも食物繊維が豊富で、コレステロールの吸収を抑制したり、余分な脂質を体外に排出したりする作用があります。コンブ、メカブ、ナメコなどに含まれる水溶性食物繊維は、中性脂肪やコレステロールを減少させ、血流を改善する効果が期待できます。
野菜は生のまま食べるよりも、蒸したりゆでたりすることで量を多く摂取できます。緑黄色野菜に豊富なビタミンA・Eは脂溶性のため、少量の油を使って調理すると吸収率が高まります。
・油の「量」と「質」に注意する
油は摂取量に注意しながら、質の良い油を選ぶことが重要です。
避けるべき油は、飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪(バター、ラード、肉の脂身)やトランス脂肪酸(マーガリン、ショートニングなど)です。これらの油を過剰摂取すると、LDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少するため、動脈硬化のリスクが高まります。
推奨される油は、不飽和脂肪酸を多く含むオリーブ油、アマニ油、しそ油、えごま油などです。これらには、血中の中性脂肪やコレステロール値を調節する働きがあるとされています。
肉を食べる際は、脂身の少ない部位(ヒレ、ももなど)を選び、脂身は取り除くようにしましょう。調理法は、揚げ物を避け、グリルで焼く、湯通しして余分な脂を落とす、蒸すといった、油を過剰に使わない方法を選びましょう。
食事改善の効果的な進め方
脂質異常症を食事で改善するために、以下のステップで進めることをお勧めします。
ステップ1:食事内容を記録する
食事改善を始めるには、まず現状の食生活を把握する必要があります。平日と休日それぞれ1日分の食事内容を記録してみましょう。自分の食事を客観的に振り返ることで、食材や調理法の偏り、過不足などが明確になり、改善目標を立てやすくなります。
スマートフォンの食事記録アプリを活用すれば、簡単に記録することができます。
ステップ2:医師と相談し、1-3か月間などの改善目標を設定する
食事改善のための具体的な目標を設定しましょう。自己流ではなく、必ず医師と相談して決めることが重要です。
目標は高すぎるとモチベーションを維持できないため、無理なく継続できる目標を設定しましょう。
ステップ3:定期的に効果を検証する
生活習慣の改善効果は、通常3〜6ヶ月で血液検査の数値に現れます。定期的に検査を受け、数値の変化を確認しながら、食事療法を継続しましょう。
運動による改善方法

運動を継続することで、血圧の安定、血糖値の改善、血管の強化、血栓予防など、動脈硬化を防ぐ多くの効果が得られます。
・推奨される運動の種類と強度
厚生労働省は、脂質異常症を含む生活習慣病患者に対して、血圧があまり上昇せず、エネルギー消費量の大きい運動を推奨しています。体感としては「楽である」または「ややきつい」と感じる程度の運動が適切です。
運動習慣のない方は、いきなり「ややきつい」運動から始めると継続が難しいため、まずは「楽な運動」から始め、慣れてきたら徐々に強度を上げていきましょう。
・推奨される運動
まずは散歩から始め、徐々にウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリング、ダンス、球技、ジムトレーニングなどに挑戦していきましょう。ただし、以下のような症状がある場合は、その日の運動は中止しましょう。
- 動悸が激しい
- 発熱がある
- 吐き気やめまいがある
- 腹痛や下痢がある
- 足にむくみがある
既往症がある方は、運動を始める前に必ず医師に相談してください。
オンライン診療という選択肢

Dクリニック東京ウェルネスでは、スマートフォンやパソコンのビデオ通話機能を利用したオンライン診療を提供しています。オンライン診療は、厚生労働省が認めた診療形態で、自宅やオフィスから医師の診察を受けることができます。
オンライン診療のメリット
食事改善を始めるためには、食べ方の問題点を把握する必要があります。そのためにおこなってほしいのは、食事の記録をとることです。
通院にかかる時間と交通費を削減
- 処方薬は自宅に配送
- 休憩中などの空き時間に診察が可能
初診や血液検査時は対面診療が必要ですが、医師が適切と判断した場合、再診以降はオンライン診療をご利用いただけます。
通院が負担になっている方、忙しくて定期通院が難しい方は、ぜひDクリニック東京ウェルネスのオンライン診療をご検討ください。
まとめ
脂質異常症の改善には、食事療法と運動療法の継続が不可欠です。自覚症状がないからといって放置すると、動脈硬化が進行し、将来的に心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。
生活習慣の改善はすぐには効果が現れませんが、3〜6ヶ月継続していくすることで血液検査の数値に変化が見られます。医師と相談しながら、無理のない目標を設定し、継続的に取り組むことが重要です。
Dクリニック東京ウェルネスでは、オンライン診療にも対応しています。健康診断で脂質異常症を指摘された方、治療を検討されている方は、お気軽にご相談ください。
記事監修者

院長
渡邊 康夫(わたなべ やすお)
Yasuo Watanabe
【略歴】
日本大学付属練馬光が丘病院
日本大学附属板橋病院
日本大学医学部医学科 循環器学博士号取得
川口市立医療センター
東京臨海病院
敬愛病院・敬愛病院附属クリニック副院長
Dクリニック東京ウェルネス 院長
【認定資格】
一般社団法人日本循環器学会 循環器専門医
一般社団法人日本内科学会 総合内科専門医
日本医師会認定産業医臨床研修指導医
厚生労働省指定オンライン診療研修修了
参考文献
出典:
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
国立循環器病研究センター「循環器病情報サービス – 脂質異常症」
厚生労働省「e-ヘルスネット – 脂質異常症」
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス」