高血圧の原因と対処法。塩分のとりすぎ・肥満・ストレス・喫煙・飲酒には注意!
高血圧は、どのようなこと原因で起こるのでしょうか。高血圧になる仕組みと、どのようなことに気をつけると良いのかを知ることで予防できる可能性があります。今回は、日々の生活に役立つようにポイントを解説します。
高血圧の原因
まずは、高血圧がどんなメカニズムによって起こるのかをみてみましょう。
心臓から送り出される血液が動脈を通る時に、動脈が血液で内側から押される圧力を「血圧」と呼びます。
心臓から血液が送り出されたその瞬間、動脈の壁はぐっと押し広げられ、つぎの血液をためている間には広がった動脈の壁もまたもとに戻ります。
動脈壁を継続的に押し広げられると動脈壁に圧力がかかり弾力性がなくなるだけではなく、血管が厚くなることで、より強い圧力をかけて血液を押し出す必要があるため負荷がかかり、高血圧となります。この原因のほかにも、まれに、遺伝的要素が原因となることもあります。
そして血管内壁が厚くなると、血液が流れる空間が狭くなり、その狭くなった血管に、塩分のとりすぎやストレスなどで、血液中の過剰な栄養分が余った流れの悪いドロドロの血液が流れるようになります。
その結果、より血管内壁が狭くなり高血圧の状態が慢性化してしまい、高血圧症となってしまいます。
このような悪循環が高血圧を引き起こしてしまうことの原因ですが、具体的にはどのようなことが要因となるのか見ていきましょう。
- 塩分の取りすぎ
- 厚生労働省が行った「平成28年国民健康・栄養調査報告」によると、1日あたり平均男性で10.8g、女性で9.2gの食塩を摂取していますが、食塩をとり過ぎると、血液中にナトリウムが溜ってしまいます。溜まったナトリウムは水分を蓄えて、ナトリウム濃度を調節しようとする働きをします。そのため血液の量が増加して、血圧が上がる要因となります。
- 肥満
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高血圧の大きな危険因子の1つに肥満が挙げられます。特に、内臓のまわりに脂肪が過剰に蓄積した内臓脂肪型肥満は血圧上昇と関連が深いとされています。
内臓の周りに蓄積している脂肪は代謝が盛んなため、血液中の脂質濃度を高め、すい臓から分泌されるインスリンの働きも悪くしてしまいます。これを「インスリン抵抗性」と呼びます。さらに、血圧を上昇させる物質が脂肪細胞から分泌されます。
その結果、高血圧以外にも、脂質異常症、糖尿病などが重なったメタボリックシンドロームも招きやすくなります。
血液量は体重の約1/13とされているため、体重増加は心機能に負担がかかります。体重減少により血圧が下がるという報告もあるため、体重の是正化に取り組むことが推奨されています。
- ストレス
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現代はストレス社会といわれています。
ストレスが溜まると、自律神経のバランスが崩れ、血圧が上昇することがあると考えられています。ストレスは、高血圧以外にも免疫力を低下させたり、頭痛、肩こり、胃痛などを引き起こしたりなど、さまざまな病気を進行させてしまうことがあります。
- 飲酒
- 血圧を一時的に下げることもありますが、大量の飲酒は、血圧上昇の原因となります。しかし「百薬の長」とも言われるように悪いことばかりではありません。節度ある飲み方をすることで、非飲酒者よりも高血圧などの病気になる可能性が低いというデータも出ています。
では、どれくらいの飲酒量を目安とするのが良いのでしょうか。
厚生労働省発表の国民健康づくり運動「健康日本21 *2」」では、「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約20g程度である旨の知識を普及する、とされています。
日々この量以上を摂取すると、摂取量が多くなればなるほど、血圧が高くなっていきます。
そのため、高血圧の方はこの量を守ることが大事になります。20gと聞いてもどれくらいの量か分かりづらいと思いますので、いくつかの種類のお酒を例に上げてみます。
・ビール(アルコール度数5度) 中瓶1本(500ml)
・日本酒(アルコール度数15度) 1合(180ml)
・ウイスキー・ブランデー(アルコール度数43度) ダブル1杯(60ml)
・焼酎(アルコール度数25度) 0.6合(約110ml)
・ワイン(アルコール度数14度) 1/4本(約180ml)
- 喫煙
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タバコには多くの有害物質が含まれていますが、特にニコチンや一酸化炭素が血圧上昇の原因であるとされています。
喫煙後15分以上、血圧上昇が起こるとされています。ニコチンが交感神経系を刺激し心拍数が増し血圧が上がります。 さらに、喫煙することで血中の一酸化炭素が増加すると、酸素を運ぶヘモグロビンが減少し、血液中の酸素が不足します。
血中一酸化炭素の増加は、心臓から血流を運ぶ力を弱め1回の収縮で運び出す血液量を減らします。
このほかにも、一酸化窒素やシアンガスなどが高血圧をはじめとした循環器疾患に影響を与えるとされています。
高血圧の要因には、ここまでお話をしてきた、塩分過多・肥満・ストレス・飲酒・喫煙といった後天的(生まれてからのちに身に備わった事柄)なものの他にも、原因が特定できない本態性高血圧(一次性高血圧とも呼ぶ)や、腎臓などのさまざまな疾患が原因要因となって血圧が上昇する「二次性高血圧 *3」があります。 二次性高血圧は、要因となる病気を治療することで改善できます。
二次性高血圧の患者数は高血圧全体の5~10%です。要因となる病気は、次の4つに大きく分けられます。
・腎臓にかかわる病気
・副腎(腎臓の上の小さな臓器)などの内分泌にかかわる病気
・大動脈にかかわる病気
・そのほかの病気や薬にかかわる病気
もっと詳しく知りたい方は、下記記事を参考にしてください。
2018年8月執筆「高血圧とは」
*3) お茶の水医科大学「二次性高血圧症まとめ」
*4) 厚生労働省「e-ヘルスネット」
高血圧予防や降圧に効果的な生活習慣
1. 生活習慣の修正項目
高血圧にならないようにするためにも、高血圧の方が血圧を下げるためにも生活習慣の改善は大事です。
では、どんなことに気をつけて、どれくらいの塩分量や野菜・果物を摂取するのが良いのでしょうか。
高血圧治療ガイドライン2014では、以下のように生活習慣を修正することが効果的とされています。
2. 食塩の1日あたり摂取目安量*6)
上の表で食塩量について1日6g未満とありましたが、まずは具体的な調味料や食品で食塩の量をみていきましょう。
食塩を多く含む調味料としては醤油や味噌が代表的です。味噌汁では、1杯約160mLとし味噌を約大さじ1杯分使ったとすると、含まれる食塩量は約1.2〜1.5gになります。
また、インスタントラーメンに含まれる食塩の量は、スープまで飲み干した場合、商品にもよりますが大体7g前後と言われています。
美味しく減塩をするコツを掴んで、義務にならないように減塩に取り組んでいくことが大事です。そこで、塩に代わる味のアクセントを使ってみるのはいかがでしょうか。
・塩分の使い方にメリハリをつけましょう
しっかり味付けしたおかずを1品にして、そのほかはできるだけ塩分を使わないようにする。
・薬味や香辛料などを効果的に使いましょう
わさびやショウガ、コショウや唐辛子、山椒、カレー粉などの薬味や香辛料を用いると、薄味にしても味にメリハリがつきます。
その結果、醤油や味噌といった塩分が多く入った調味料の使用量を減らすことができます。
・酸味を効かせる
レモンやゆず、かぼす、酢などを利用して酸味を効かせると、塩分控えめでもおいしく食べることができます。
・調味料を“かける”のではなく、“つけ”ましょう
食材の本来の味を楽しむためにも、醤油を使う場合でも、料理に“かける”のではなく“つける”ようにしましょう。
・みそ汁などの汁物に具をたっぷり入れましょう。
野菜など具を多くすることで、汁の量を控えることができます。また、1日1杯にすることでも減塩効果があります。
しかし、いつも家で食事をすることは難しく、外食やお惣菜を用いることもあると思います。
その際も、塩分量は気をつけていただきたいのですが、塩分量が表示されていないこともありますので、そんなときは、栄養成分表示を確認し「ナトリウム」から算出することが可能です。
ナトリウム(g) × 2.54 = 食塩量(g) ナトリウム400mgは食塩量約1gです。
※ナトリウムの単位がミリグラム(mg)で記載されている場合は、グラム(g)に直すため1,000で割ってください。
3. 減量、節酒、禁煙
健康診断や保健指導の際に、何度も同じことを言われている……と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、生活習慣を改善するにはどうしても減量、節酒、禁煙が必要です。
これらを実践していかなければ、血圧上昇の要因になりかねません。
- 減量
-
高血圧だけに限らず、脂質異常症(高脂血症)や糖尿病などを発症するリスクも増加し、脳梗塞や狭心症や心筋梗塞などの疾患を引き起こす可能性があります。肥満解消による血圧低下は明らかにされているため、減量する必要があります。
しかし、やみくもに減量をすれば良いということではないので、どの程度の運動をするかは、医師と相談のうえ行うことが大切です。
肥満の人は、BMI値で25未満を目指します。BMIの指数は次の計算式で分かります。
体格指数(BMI:体重(㎏)÷[身長(m)]2)
内臓脂肪が多い人ほど血圧が高いという報告もあるため、腹囲(男性85㎝未満、女性90㎝未満)も考慮して減量を行う必要があります。
- 節酒
- 高血圧だけに限らず、過度な飲酒は脳卒中、睡眠時無呼吸症候群などを発症するリスクがあります。反面、少量の飲酒は血圧改善がされるという研究データもあることから、適度なアルコール量が定められています。
- 禁煙
- 百害あって一利なしというように、高血圧に限らず脳卒中や狭心症、心筋梗塞発症の最大の危険因子であることがはっきりとしています。 そのため、周りの人の協力も仰ぎながら禁煙するようにしましょう。
*6) 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「日本人はどんな食品から食塩をとっているか?」
まとめ
高血圧の治療の際は、降圧剤の服用と生活習慣の改善が必要という話をさせていただきましたが、高血圧にならないようにするためにも生活習慣を見直し、改善することが必要です。
しかし、「生活習慣の改善が必要」だと認識をしたとしてもどんな改善が必要なのか分からず不安な方もいらっしゃると思います。
そういった場合、病院やクリニックに通院して医師や薬剤師に相談することになりますが、忙しい方にとってはそれが苦痛になってしまうこともあると思います。
そこで、活躍するのが気軽に相談ができるオンライン診療サービス「スマホ診」です。
通院前の事前相談からオンラインで行うことができるので、ぜひ活用してみてください。
高血圧・狭心症治療や患者指導の情報サイト 解剖/病態編(解説) -5.血圧とは
厚生労働省 平成28年国民健康・栄養調査報告 P160 第55表 食塩摂取量の平均値(20歳以上、性・都道府県別、年齢調整値)
日本赤十字社 血液の基礎知識 血液の量・献血の量について
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014 P42,P43,P115
公益財団法人 喫煙科学研究財団 喫煙と循環器機能-血液循環動態に及ぼす喫煙の影響- ニコチンの循環器機能に及ぼす作用
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「日本人はどんな食品から食塩をとっているか?」 食塩摂取源となっている食品のランキング(20歳以上)
栃木県減塩栄養指導マニュアル P2