総コレステロール・中性脂肪の基準値と健康診断の結果の見方
毎年の健康診断は、特定の病気を見つけることだけではなく、自身の健康状態を把握し、自覚症状のない病気やその予兆を早期に発見し、対策に役立てることも目的のひとつとして実施されています。
今回は、健康診断で行われる複数の検査の中から、脂質検査についてご説明いたします。血液の中には、主に中性脂肪・コレステロール・リン脂質・脂肪酸の4種類の脂質が含まれています。
脂質検査は、血液中の中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロー ル、総コレステロールの数値を調べ、生活習慣病の1つである脂質異常症(高脂血症)の疑いがあるかを調べる検査になります。
脂質異常症(高脂血症)は、自覚症状が無いため危機感を持ちにくい疾患ですが、血中の脂質のバランスが崩れると血管にダメージを与え、動脈硬化の原因となります。検査結果の数値が基準値を超えていた場合は、医療機関への受診を検討することをオススメします。
では、項目別に基準値を説明いたします。
中性脂肪
中性脂肪は悪者のように扱われがちですが、実は「エネルギーの貯蔵庫」として、人が生きるために重要な役割を担っています。
また皮下脂肪や内臓脂肪に貯蔵された中性脂肪は、寒さや暑さから体を守り体温を一定に保つ「断熱材」としての役割や衝撃を吸収する「クッション材」としての役割、また臓器を所定の位置に保つ「パッキング」としての役割なども持っています。
こうした役割をもつ中性脂肪ですが、増え過ぎると肥満の原因となり、症状が進むと脂肪肝、糖尿病などの疾患を引き起こす要因となります。
中性脂肪値は、特に、過食、アルコール摂取過多により値が上昇する傾向にあります。健康保険組合により目安値は異なりますが、ここでは日本人間ドック学会での目安をお伝えします。
健康診断の結果を見て、自分の中性脂肪の値がどのあたりに該当するのかチェックしてみましょう。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)
コレステロールは、ホルモンの材料になったり、肝臓で消化液のひとつである胆汁酸に変換され消化・吸収を助けたり、全身の細胞膜の構成成分になったりと、私たちが生きていくうえで非常に大切な役割を担っています。
コレステロールは大きくは、回収を担うHDL(善玉)コレステロールと、運搬を担うLDL(悪玉)コレステロールに分類されますが、これは単なる役割の違いであって、そのコレステロールそのものが善い・悪いということではありません。
HDLコレステロールは、体内の余分なコレステロールを回収し、血管にたまったコレステロールを肝臓に戻します。先に述べたようにコレステロールは大変重要な役割を持ちますが、身体が必要としている以上のコレステロールは血管の通り道を狭くするだけなので、しっかり回収をしてもらわないと動脈硬化の原因となります。つまり回収を担うHDL(善玉)コレステロールが低すぎのは大きな問題なのです。
健康保険組合により目安値は異なりますが、ここでは日本人間ドック学会での目安をお伝えします。
健康診断の結果を見て、自分のHDLコレステロールの値は足りているかチェックをしてみましょう。
HDLコレステロールが低かった方は、食習慣の他にも、運動不足や喫煙も大きな要因となりますので、自身の生活習慣を振り返ってみてください。
あわせて、「脂質異常症・高脂血症とは?」をご覧ください。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
先述した通り重要な役割を果たすコレステロールを、身体の隅々まで運ぶのがLDLコレステロールです。正常値内であれば問題がないのですが、過剰になると血管の壁に入りこみ、動脈硬化を引き起こす原因のひとつとなるため、悪玉コレステロールと呼ばれています。
体内の脂質は、活性酸素の影響を受けると酸化します。酸化した脂質は過酸化脂質という有害物質になり、細胞膜を脆くします。さらにこの過酸化脂質は、周囲にある細胞も次々と酸化させてしまいます。ここにLDLコレステロールによって、身体が必要とする以上のコレステロールが運搬されてくると、どうなるでしょう?コレステロールは脂質ですので同様に酸化され酸化LDLとなり、血管の内壁に沈着して動脈硬化を引き起こす要因となるのです。この動脈硬化の進行は、心筋梗塞や狭心症・脳梗塞などの動脈硬化性疾患を誘発させる可能性があります。
悪玉コレステロールと善玉コレステロールは相互に作用します。悪玉コレステロールが血液内に多いとコレステロールがたまりやすく、また、善玉コレステロールが血液内に少ないと回収されるコレステロールが少ないため、結果としてコレステロールがたまりやすくなります。
健康保険組合により目安値は異なりますが、ここでは日本人間ドック学会での目安をお伝えします。
健康診断の結果を見て、自分のLDLコレステロールの値が高すぎないかチェックをしてみましょう。
あわせて、「脂質異常症・高脂血症とは?」をご覧ください。
総コレステロール
総コレステロールはHDLコレステロールとLDLコレステロール、中性脂肪から算出されます。値そのものに一喜一憂するのではなく、どんな要素でその値ができているのか着目することが大切です。必ずどの値が高いのか、低いのかを確認し、必要な対応をとりましょう。
参考までに総コレステロールの基準値を示しておきます。
健康保険組合によりコレステロールの目安値は異なりますが、ここでは日本人間ドック学会での目安をお伝えします。
また、総コレステロール値を減らすためには、食事療法と運動療法を行う必要があります。詳しくは、「脂質異常症・高脂血症とは?」をご覧ください。
食事療法と運動療法
中性脂肪やHDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値を減らすためには、食事療法と運動療法を行う必要があります。
1. 食事を取る際のポイント
脂質異常症(高脂血症)の食事療法は、5大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル)と植物繊維をバランスよくとることが大切です。多品種の食品をそれぞれ少量ずつ摂取するように心がけると、自然とバランスも良くなってきます。その上で、食べる時は次のポイントを意識してみてください。
・朝食、昼食、夕食を規則的にとる。
・腹八分目とする。
・就寝前2時間は摂食しない。
・よく噛んで食べる。
・まとめ食い、ながら食いを避ける。
・薄味にする。
・外食はできるだけ控える。
詳しくは、「脂質異常症・高脂血症とは?」をご覧ください。
2. 運動をする際のポイント
運動で血流が良くなると、体内の中性脂肪が減り、HDLコレステロール値が上がります。HDLコレステロール値が上がると、結果的にLDLコレステロール値も下がってきます。運動療法は脂質異常症(高脂血症)の治療には欠かせないものです。
短い期間に集中して行う運動よりは、毎日の習慣にしてしまえるような運動の方が効果的です。精神的な負荷がかかりすぎない、ある程度長時間続けられる有酸素運動が適しています。運動療法においては、次をポイントにしてみてください。
・有酸素運動を毎日30分以上行う(早歩きの散歩など)
・「少しきついけど続けられる」と感じる程度が目安(心拍数110~120/分程度)
しかし、持病をお持ちの方は、運動が逆効果になってしまうこともあるので、まず初めに医師と相談をしましょう。 詳しくは、「脂質異常症・高脂血症とは?」をご覧ください。
最後に
ここまで読んでいただくとお分かりいただけるように、脂質異常症(高脂血症)はいくつもの要素が含まれた疾患です。参考とする数値も複数あり、時には混乱してしまうかもしれません。
自覚症状が出にくく、加えて血圧測定のように、簡単に自分の日常の値を把握することができない疾患のため、危機感を持ちにくいという傾向があります。
しかし脂質異常症(高脂血症)を放っておくと、動脈硬化は確実に進行し、将来的に脳梗塞や心疾患といった恐ろしい病気を引き起こすことになりかねません。
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